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札幌高等裁判所 昭和55年(う)35号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人福岡定吉提出の控訴趣意書に記載されたとおり(なお、弁護人は、控訴趣意書第一点の五項は、「ほしいままに占拠したことがなかった」という事実誤認の主張を含むものである。と釈明した。)であるから、これを引用する。

一  事実誤認の主張について

所論にかんがみ、一件記録を精査検討すると、原審で取り調べられた各証拠によれば、被告人は、A及びB子と相談したうえ、阿寒国立公園内の特別地域(自然公園法一七条一項所定の指定がなされた区域)内にある原判示の摩周第一展望所(展望台と付加一体をなす駐車場)内において昭和五三年五月上旬以降降雨の日を除き、ほとんど毎日原判示の自動車を長時間駐車し、同車の荷台を用いてとうきび、焼いか、いもなどの物品を販売し、もって右展望所をほしいままに(みだりに)占拠していたところ、昭和五三年六月一二日及び同月三〇日の二回にわたり、原判示の職員から原判示の指示書に基づいて右占拠行為をやめなければならない旨の指示を受けたものであるが、それにもかかわらず、A及びB子と共謀の上、この指示に従わないで、同年七月一二日午前一〇時ころから同日午前一〇時二〇分ころまで前記駐車場内に前記自動車を駐車し、その荷台を用いて焼いか等の物品を販売していたことを優に肯認することができ、右認定を左右するに足る証拠はないが、以上の認定事実によると、たとえ右自動車が同一場所に長時間とどまっていたものではなく、その間右駐車場内において移動することがあったとしても、被告人は右両名と共謀の上前記展望所をほしいままに(みだりに)占拠したものといわざるを得ないから、これと同旨の事実を認定している原判決の事実認定は正当で、原判決には所論のような事実の誤認はない。

二  法令適用の誤りの主張について

所論にかんがみ検討するに、自然公園法第一七条所定の特別地域(国立公園内の区域)内において展望所をほしいままに(みだりに)占拠している者が同法第二四条二項所定の指示を受けた場合、その後右指示に従わないで右展望所をほしいままに(みだりに)占拠した場合には、以上の各占拠行為が右国立公園の利用者に著しく不快の念を起こさせるようなもの、又は、右利用者に著しく迷惑をかけるようなものではなくても、同法五二条六号(二四条一項二号、二項)の犯罪構成要件が充足されるものと解すべきであり、従ってこれと同旨の法解釈の下に法令の適用をした原判決は正当で、原判決には何ら法令適用の誤りはない。所論は失当である。

よって論旨はすべて理由がないので、刑事訴訟法三九六条により本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決をする。

(裁判長裁判官 山本卓 裁判官 藤原昇治 雛形要松)

〈以下省略〉

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